生ごみ処理器キエーロ
ゼロカーボンに向けた取組みの一環として、生ごみ処理器キエーロの販売を行っています!
令和2年度から昨年度までの4年間で、100人以上の市民の方にキエーロを販売することができました。しかし、多くの方がキエーロに魅力を感じ使用していただいている一方で、「置く場所がない」、「準備や処分が大変そう」といった理由で、購入を躊躇してしまうという声もありました。
そこで今年度は、より多くの方が自宅で手軽に生ごみを処理していただけるように、市で販売を行っているキエーロ以外でも実験を行います。キエーロを既に使っている方、購入を迷っている方、購入を諦めた方…。様々な暮らしの事情がある中で、本実験をご覧になった全ての方にとって、生ごみ削減に向けた取り組みを始めるきっかけとなってほしいと思います。
生ごみ処理器キエーロ比較実験
ミニ・キエーロ
キエーロで生ごみを処理することのメリットとして、次のことが挙げられます。
- 容積が大きいため、一度に大量に生ごみを投入できる。また、毎日投入できる。
- 頑丈な作りで重量があるため、雨風に強い。
- 蓋をすることができるため、動物に荒らされたり、虫が湧く心配がない。
しかし、次のようなデメリットもあります。
- 設置できる場所が限られる。
- 黒土を入れると非常に重く、移動が困難になる。
- 寿命を迎えた後の処分に手間がかかる(黒土は処理困難物になります)。
そこで今回は、キエーロが持つメリットをうまく残しつつ、デメリットを抑えて生ごみを処理できる方法として、次のような仮説を立てて検証していきます!
仮説:身近な容器で作ったミニ・キエーロでも、生ごみを分解できるのではないか?
従来のキエーロに加えて、今回用意した容器は次のとおりです。
- キエーロ(縦50センチ×横90センチ×高さ70センチ)
- プランター(縦23センチ×横60センチ×高さ20センチ)
- バケツ(縦28センチ、横28センチ、高さ20センチ)
- 植木鉢(縦15センチ、横15センチ、高さ16センチ)
投入する生ごみは、昨年度に引き続き、不法投棄されてしまった猫缶(155グラム)です。黒土を入れた各容器に猫缶と水を投入し、乾いた土で蓋をして、キエーロ内の温度を1週間観察します。
(1)キエーロ | (2)プランター | (3)バケツ | (4)植木鉢 | |
---|---|---|---|---|
1日後 | 42℃ | 40℃ | 40℃ | 36℃ |
2日後 | 36℃ | 37℃ | 34℃ | 33℃ |
3日後 | 31℃ | 32℃ | 30℃ | 30℃ |
4日後 | 30℃ | 31℃ | 30℃ | 31℃ |
7日後 | 30℃ | 30℃ | 29℃ | 30℃ |
1週間後に掘り起こしたところ、(1)~(3)は完全に生ごみが分解されていました! 一方で、(4)は少量の生ごみが残ってしまいました。温度上昇の推移を見てみると、(1)の温度が最も高く、(4)の温度が最も低かったことから、容器が小さすぎると生ごみを十分に分解できないことが分かりました。
また、今回の実験で気になったこととして、(2)~(4)の周辺にハエが飛んでいたこと、生ごみの臭いが発生したことがありました。猫缶のような臭いの強い生ごみの場合は、乾いた土を被せただけでは臭い、虫対策として不十分なようです…。そこで、この問題の改善策として、(1)と同様に(2)、(3)にも波板で蓋をしてみました。今回の実験で完全に分解できなかった(4)を除いて、同じ条件で実験を行います。
※バクテリアが生ごみを分解するためには酸素が必要です。バクテリアに酸素を届けるため、平らな板ではなく波板を選びました。
(1)キエーロ | (2)プランター | (3)バケツ | |
---|---|---|---|
1日後 | 39℃ | 38℃ | 38℃ |
2日後 | 36℃ | 36℃ | 34℃ |
5日後 | 30℃ | 31℃ | 30℃ |
6日後 | 28℃ | 29℃ | 29℃ |
結果:ミニ・キエーロでも生ごみを処理することができる! 155グラム(お茶碗一杯ほど)の生ごみを処理するためには、最小でも(3)のサイズの容器が必要!
6日後に掘り起こしたところ、(1)~(3)全てで生ごみが分解されていました! 波板を設置したことにより、周囲に臭いが飛散したり、虫が集まってくることもありませんでした。野良猫やアライグマといった野生動物によって掘り返されないためにも、このような対策をすることが重要です。
キエーロは容積が大きいため毎日生ごみを入れることができますが、今回実験で使用したプランターやバケツは、生ごみが分解されるまで次の使用を待たなければなりません。しかし、これらの容器を複数個用意することで、連続して生ごみを処理することができます。また、使わなくなった容器をリユースし、省スペースで使用できるというメリットもあります。
ご自宅に使わなくなった容器はありませんか? ミニ・キエーロを作って、生ごみの量を減らしていきましょう!
考察:ミニ・キエーロを使用した生ごみ処理は、誰でも簡単に始めることができる!
設置場所の比較実験
キエーロに投入した生ごみは、黒土の中に棲むバクテリアによって、水や二酸化炭素等に分解されます。この時、バクテリアは酸素を消費して活動し、熱を発生させます。このことから、バクテリアの活動を活性化させ、分解がしやすい環境をつくるためには、「風通しが良く、空気の入れ替えが十分にできる場所」、また「日当たりが良く、気温が高い場所」にキエーロを設置することが求められます。
令和5年度以前は従来のキエーロのみで比較実験を行っていたため、設置場所を変えることはできませんでした(黒土を入れたキエーロは大変重く、移動させることは困難です…)。そこで今回は、前回の実験で作成したミニ・キエーロをそれぞれ環境が異なる場所に設置することで、分解のしやすさにどれ程の差が生まれるかを検証します。
投入する生ごみは、不法投棄されてしまった、いわしの缶詰め200gです。(1),(2)は市庁舎2階のベランダ(南東向き)の日向と日陰に設置し、(2)は生ごみを投入したバケツに箱を被せて、なるべく日が当たらないようにします。(3)は窓が無く、一日中日が当たらない室内に設置します。
(1)キエーロ | (2)バケツ | (3)植木鉢 | |
---|---|---|---|
設置場所 | 庁舎ベランダ(日向) | 庁舎ベランダ(日陰) | 室内(暗所) |
日当たり | 〇 | × | × |
風通し | 〇 | 〇 | × |
気温 | 高 | 中 |
低(27℃~29℃) |
(1)キエーロ | (2)バケツ | (3)植木鉢 | 天気(最高気温) | |
---|---|---|---|---|
1日後 | 52℃ | 49℃ | 48℃ | 晴(36℃) |
2日後 | 48℃ | 48℃ | 47℃ | 晴(36℃) |
3日後 | 41℃ | 42℃ | 42℃ | 曇(33℃) |
4日後 | 36℃ | 34℃ | 37℃ | 晴(37℃) |
投入から4日後に全てのキエーロの温度が落ち着いたため、一度掘り起こしてみました。すると、(1)は完全に分解されていたものの、(2),(3)は分解途中の生ごみが残っていました。(2)に残っていたものは直径2,3センチ位の塊、(3)は直径5センチ位の大きな塊が残っており、掘り起こした際の臭いも(3)の方が強いようでした。また、(3)は生ごみの周りの土が少し湿っていました。どちらも再度生ごみを埋めて、3日後に再度掘り起こします。
(1)キエーロ | (2)バケツ | (3)植木鉢 | 天気(最高気温) | |
---|---|---|---|---|
7日後 | 34℃ | 32℃ | 30℃ | 曇(33℃) |
結果:日当たりと風通しが悪い場所でも、生ごみは完全に分解された!
投入から7日後に掘り起こした結果、(2)と(3)も完全に分解されていました。(2),(3)と比較して(1)が最も早く分解されたことから、やはり上記の条件が揃った場所にキエーロを設置することが効果的であることが分かりました。しかし、今回初めて複数の場所で同時に実験を行ったことで、キエーロにとって条件が悪い場所でも、生ごみを完全に分解することができることが分かりました。
当市では令和5年度までに行った実験で、黒土の改良方法、分解がしやすい生ごみの入れ方など、様々な工夫の方法を紹介しています。ご自宅がキエーロの使用に向かない環境であっても、これらの方法も参考にしながら、キエーロを始めてみてください!
考察:キエーロの設置場所の条件が悪くても、生ごみを処理することができる!
容器ごと投入実験
生活環境課が使用しているキエーロには、不法投棄食品の処分のため、缶詰など容器に入った食品を入れています。その中で、油性や臭いが強い魚の缶詰などを処分した際は、空の容器を入れたごみ袋から悪臭がしたり、虫が寄ってきてしまうことがあり、悩まされることが多くあります。そこで今回は、この問題の解決策として、次のような仮説を立てて実験を行いました。
仮説:容器ごとキエーロに入れてしまえば、バクテリアが臭いや汚れを落としてくれるのではないか?
悪臭や虫の発生の原因は、空の容器に付着した食品が空気中で腐ってしまうことにあります。それならば、食品と一緒に容器ごとキエーロに入れ、それをバクテリアに分解させることで、臭いや汚れを落とすことができるのではないかと考えました。
今回の実験では、トマト缶(400グラム)、ホワイトソース缶(300グラム)、鯖缶(160グラム)を使用します。大きめの穴をキエーロに掘り、まずは中身を全て入れます。
その後、容器の中に土が入るようにして埋め、1週間様子を見ます。
また、もう一つのキエーロには、いわしの缶詰の空き缶4個のみを入れてみました。以前中身をキエーロで処分し、容器は不燃ごみとして袋に保管していましたが、周辺に生ごみの臭いが漏れてしまっていました。
(1)キエーロ内温度 | 天気(最高気温) | |
---|---|---|
1日後 | 37℃ | 晴(29℃) |
2日後 | 34℃ | 曇(26℃) |
3日後 | 27℃ | 曇(25℃) |
6日後 | 25℃ | 晴(27℃) |
7日後 | 25℃ | 雨(22℃) |
7日後に掘り起こしたところ、全ての生ごみが完全に分解されていました!
容器に付いた土を完全に落とすため、生活環境課職員が「ヘチマ・プロジェクト」で作ったヘチマたわしを使ってみます。
※「ヘチマ・プロジェクト」の詳細はこちら(新規ウィンドウが開きます)。
結果:全ての容器がきれいになった!
洗剤を使用せず、水とヘチマたわしだけで簡単に土を落とすことができました。臭いについても、魚が入っていたことが分からないほど無くなっていました。これにより、本来であれば不燃ごみ扱いとなってしまう缶詰でも、びん・かん類として資源化することができそうです(ホワイトソース缶については、缶の劣化が激しいため、「燃やせないごみ」として出しました)。また、臭いの強い缶詰の容器を家の中に保管することもなくなります!
※今回の実験で用意ができたのは、全て口が広く、土の出し入れや洗浄が簡単な容器のみです。この条件に当てはまらない容器については、うまくいかない可能性があります。
考察:バクテリアのはたらきによって、ごみを資源に変えることができる!
もみ殻を入れました!
職員の自宅で使い道がなく、廃棄予定だったもみ殻を入れました!梅雨の時期など湿気が多い日が続くと、土の中の通気性が悪くなり、虫の発生や分解の遅れの原因となってしまいます。この対策として、もみ殻やそば殻、おがくずなどを土に混ぜることが効果的です。水分で土が塊になることを防ぐため、バクテリアに十分な空気を届けることができます。
土の改良で分解促進!
キエーロを使用している多くの方が、冬の厳しい寒さに悩まされています。この対策として、「生ごみを細かく刻む」など生ごみ自体に対する工夫や、「よく日が当たる場所にキエーロを設置する」などキエーロを使用する環境に対する工夫のほか、バクテリアの棲みかである土を改良することも重要です。
令和3年度、令和4年度の実験では、「米ぬか」や「牛糞」を土に混ぜることで、バクテリアが活性化し分解が促進されることが分かっています。これらの他にもっと効果的なものはないものか・・・とホームセンターを探ってみたところ、「EMぼかし」が目に留まりました。
「EMぼかし」とは?
EMとは、''Effective(有用な) Microorganisms(微生物群)''の略語です。
米ぬかに乳酸菌や酵母菌などの微生物を加え、乾燥・発酵させて作ります。
コンポストを使用する際に、生ごみと一緒にEMぼかしを入れると分解が促進されるそうです。ところが、使用方法について見てみると、「密閉容器に生ごみとEMぼかしを入れてください」という説明がありました。密閉型のコンポストは嫌気性細菌(酸素が少ない環境を好む微生物)が活躍しますが、キエーロは好気性細菌(酸素が多い環境を好む微生物)のはたらきで生ごみを分解しています。生ごみが消滅するという点は同じですが、分解の方法や微生物の種類が異なる場合でも、分解促進の効果が現れるのでしょうか?実際に使用してみました!
使用する生ごみは、不法投棄されてしまった猫缶(310グラム×3)です。次の3つの条件に分けてキエーロに入れ、1週間様子を見ます。
- 生ごみ+水
- 生ごみ+米ぬか(300グラム)+水
- 生ごみ+米ぬか(300グラム)+EMぼかし(30グラム)+水
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(1) |
(2) |
(3) |
天気(最高気温) |
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1日後 |
12℃ |
11℃ |
12℃ |
曇(11℃) |
2日後 |
16℃ |
18℃ |
19℃ |
晴(14℃) |
3日後 |
16℃ |
18℃ |
18℃ |
晴(14℃) |
4日後 |
13℃ |
12℃ |
13℃ |
晴(12℃) |
7日後 |
13℃ |
13℃ |
12℃ |
晴(14℃) |
結果:明確な違いは見られませんでした・・・!
2~3℃と僅かな差ですが、(2),(3)は(1)と比較して温度が上昇しました。7日後に掘り起こしたところ、全ての条件で1センチ~2センチ位の大きさの分解途中の生ごみが残っていましたが、(2),(3)は(1)よりも水分量が少なく、シャベルで簡単に崩せるほど柔らかくなっていました。投入した水の量は変わらないことから、(2),(3)は水の消費と共に(1)よりも早く分解が進んだものとみられます。
しかし、今回の実験の目的である「EMぼかしによる分解促進」の効果は分かりませんでした・・・。残念な結果になってしまいましたが、まだ諦めません! 次回は生ごみやEMぼかしの量などを再度調整して、リベンジしたいと思います。
土の改良(リベンジ)+生ごみ大量投入 
前回の実験ではEMぼかしの効果が分からなかったため、今回は投入する生ごみとEMぼかしの量を増やして実験を行います。
投入する生ごみは次のとおりで、合計約3.8キログラムの量があります! 溜まっていた不法投棄の食品を、この機会に一気に片づけてしまいます。
投入する生ごみ
- サバの缶詰1,380グラム
- サンマの缶詰960グラム
- 桃の缶詰500グラム
- 内容物不明(魚?)の缶詰450グラム
- すりおろし人参350グラム
- カニの缶詰135グラム
- めんつゆ100グラム
それぞれの生ごみを3等分した上で、次のとおり条件を変えて実験を行います。
- 生ごみ(約1.3キログラム)
- 生ごみ(約1.3キログラム)+米ぬか(600グラム)
- 生ごみ(約1.3キログラム)+米ぬか(600グラム)+EMぼかし(60グラム)
前回と比較して生ごみの量が多いため、米ぬかとEM菌を増やしました。また、今回は桃の缶詰など水分を多く含む生ごみが多いため、水は入れないことにしました(投入する水が多すぎると、生ごみが固まってしまったり、臭いが発生する要因となります)。
冬の寒い時期に大量の生ごみを投入するため、分解が終わるまでに長時間を要することが予測されます。今回は少しでも分解速度を上げるため、温度の計測の度に生ごみをシャベルでかき混ぜて、空気を多く含ませるようにしました。
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(1) |
(2) |
(3) |
天気(最高気温) |
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1日後 |
12℃ |
15℃ |
14℃ |
曇(9℃) |
2日後 |
19℃ |
19℃ |
19℃ |
晴(12℃) |
3日後 |
18℃ |
21℃ |
20℃ |
晴(12℃) |
4日後 |
16℃ |
16℃ |
17℃ |
晴(13℃) |
7日後 |
16℃ |
17℃ |
16℃ |
晴(11℃) |
結果:EM菌の効果は分からず!
1週間後に掘り起こしたところ、全ての条件で分解途中の生ごみが残っていました(再度埋め直したところ、1週間ほどで完全に分解されました)。しかし、(1)が生ごみが固まり大きな塊になっていたことに対して、(2),(3)は塊が小さく、シャベルで簡単に崩せるほど柔らかい状態でした。やはり、米ぬかは生ごみの分解促進の作用があり、冬の寒い時期や大量に生ごみを投入した場合にも効果があることが改めて分かりました。
(2),(3)の分解しやすさの違いについては・・・分かりませんでした! キエーロのように好気性細菌のはたらきによって生ごみを分解する場合は、EM菌は効果を発揮しないようです。しかし、これまでの実験の中で最も多くの生ごみを投入し、それが全てなくなったことを受けて、キエーロのありがたみと米ぬかの分解促進効果を改めて実感しました。
編集後記
身近にある容器で簡単に始められ、1週間から2週間で生ごみを簡単に処分することができるキエーロは、大変便利だと比較実験を通して実感しました。また、キエーロをより効果的に使うため試行を繰り返すことは、夏休みの自由研究のような、好奇心を掻き立てるものがありました。既にキエーロを使用している方は、是非楽しみながら新しい発見をしていただき、まだ使用していない方は、バケツやプランターをはじめ、簡単な容器から生ごみの処理を始めていただきたいと思います。市は今後も、自宅における生ごみの処理をはじめ、ゼロカーボンに向けた取り組みを発信していきます!