生ごみ処理器キエーロ
昨年度に引き続き、令和5年度もキエーロを販売しています!
キエーロの実験を始めて4年目となる今年度は、これまでとは異なる視点に立ち、「分解しにくい」生ごみでも積極的に実験を行います!
「こんな工夫をすることで、分解されるようになった!」反対に、「キエーロで処分するには不向きなのでやめておこう…」といったことを、本実験を通して発信していきます。
生ごみ処理器キエーロ比較実験
卵の殻の分解実験
カルシウムを多く含む生ごみ(卵の殻、貝殻、魚の骨など)は分解がしにくく、キエーロの中に長い間残ってしまいます。
昨年度までの比較実験では、生ごみを細かくして土との接触面を大きくすると分解が促進されることが分かっています。この方法は、卵の殻にも通用するのでしょうか…?。 また、分解がしやすい生ごみの力でバクテリアを活性化させると、卵の殻の分解も早まるのか?ということについて、次のような仮説を立て検証していきます!
仮説:卵の殻を細かく砕き、分解がしやすい生ごみと一緒に入れると、卵の殻の分解も促進されるのではないか?
1には卵の殻(そのまま)、2には卵の殻を砕いて粉末状にしたもの、3には2+食パン、野菜類200g(なす、ピーマン、キャベツ、人参の皮、しめじ)、オリーブオイルを入れ、分解を待ちます。1~3の卵の殻は、全て同じ量(30g)にしています。
※今回使用した生ごみは、賞味期限切れや不可食部のものです。食品ロス削減のためにも、食べきり・飲みきりのご協力をお願いします。
結果(1週間後)
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1卵の殻(そのまま)+水 |
2卵の殻(粉末状)+水 |
3卵の殻(粉末状)+野菜等+オリーブオイル+水 |
キエーロ内の温度 |
1日後 |
36℃ |
36℃ |
52℃ |
34℃ |
2日後 |
34℃ |
34℃ |
50℃ |
33℃ |
3日後 |
31℃ |
31℃ |
37℃ |
30℃ |
6日後 |
32℃ |
33℃ |
34℃ |
32℃ |
7日後 |
31℃ |
31℃ |
33℃ |
31℃ |
1、2はほぼ温度が上がりませんでしたが、3は約50℃まで上昇し、卵の殻を除く生ごみはほぼ分解されていました。このことから、やはり土の中のバクテリアは卵の殻を好んで食べないことが分かります。1は投入前とほぼ同じ状態、2、3はかなり少なくなっていました。掘り起こした翌日に再度水(3のみ水+200gの野菜等)を加え、様子を見ます。
結果(2週間後)
結果:明確な結果は得られませんでした…!
1は1週間前と同様、大きさに変化はありませんでした。しかし手で触れてみると、投入前より柔らかく、殻の組織が脆くなっていました。このままキエーロに入れ続ければ、いつかは分解されてなくなるのでしょうか…? 2、3についてはほぼなくなっているように見えますが、キエーロ全体を見渡すと、細かい卵の殻が混ざっていました。
今回立てた仮説のうち、「分解がしやすい生ごみを一緒に入れた場合」の結果は得られませんでした…。しかし、卵の殻は粉末状にして投入すると土と一体化するため、キエーロの使用に支障はないことが分かりました。
卵の殻に多く含まれるカルシウムは、植物の根の生育を促進し、細胞の結びつきを強くする作用があります。また、卵の殻は空気を通す性質があるため、土の通気性を高めることもできます。キエーロでより良質な肥料をつくるために、卵の殻を入れてみてはいかがでしょうか?
考察:卵の殻が分解されなくても、キエーロは問題なく使用することができる!
ペットフードの分解実験
キエーロは、料理で使えない食材の切れ端や、食べ残し・飲み残しなど、人間の食生活上で出る生ごみを処分することを目的に作られています。それでは、犬や猫など、人間以外の動物のために作られた食べ物はどうでしょうか? ペットを飼われている方は、「ペットフードの賞味期限を切らしてしまった」「ワンちゃん、猫ちゃんの好みに合わず、余らせてしまった」などの経験はありませんか? 今回は、不法投棄されて困っていたカツオの猫缶(賞味期限切れ)を使って、実験をしていきます。
水ありと水なしの比較実験
仮説:分解がしやすい特徴を多く持つ生ごみは、水を加えないでも分解ができるのではないか?
猫缶は、令和5年度までの実験で判明した、分解がしやすい生ごみの特徴を多く持っています。具体的には、油分を多く含む調理済みの魚であり、身がフレーク状に細かくなっていることなどが挙げられます。このことから、キエーロを使う上での原則である水を一切入れず、猫缶のみを投入しても、分解することができるのではないかと仮説を立てました。今回は通常の方法との比較のため、1猫缶(465g)+水(200ml)と2猫缶(465g)のみ に分けて実験を行います。
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1猫缶(465g)+水(200ml) |
2猫缶(465g) |
1日後 |
48℃ |
43℃ |
2日後 |
48℃ |
43℃ |
3日後 |
46℃ |
39℃ |
6日後 |
36℃ |
35℃ |
7日後 |
32℃ |
30℃ |
結果:水を加えなくても完全に分解ができる!
やはり1の方の温度が高くなり、分解も早く進みました。しかし、2を1週間後に掘り起こしたところ、1と同様に完全に分解されていました。水が不足すると投入した生ごみが塊になってしまうことがありますが、生ごみがあったことが分からないほど綺麗に無くなってしまいました。今回はカツオの猫缶で実験を行ったため、この結果は人間用の魚の缶詰全般にも当てはまりそうです。
考察:猫缶のように油分を多く含む缶詰は、水不要で簡単に処分ができる!
生ごみを投入する深さの比較実験
仮説:生ごみを入れる深さが浅いほど、分解が早く進むのではないか?
黒土の中のバクテリアは、酸素が豊富にあり、日当たりの良い場所で活性化することが分かっています。そのため、風通しがよく、直射日光が当たる黒土の表面付近が最も分解が早く進むのではないかと仮説を立てました。前回の実験は黒土の表面から20センチほどで行ったため、今回は生ごみの量は同じにして、投入する深さのみ変えて実験を行います。
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1猫缶(465g)+水(200ml) ※深さ10センチ |
2猫缶(465g)+水(200ml) ※深さ30センチ |
1日後 |
48℃ |
43℃ |
2日後 |
47℃ |
42℃ |
3日後 |
44℃ |
39℃ |
6日後 |
31℃ |
34℃ |
結果:ほぼ仮説通り!しかし、デメリットの方が大きい!!
1の方が2と比較して温度が上昇したため、分解のしやすさは生ごみを投入する深さに影響することが分かります。しかし、1(10センチ)と前回の実験(20センチ)の温度がほぼ同じであったことから、分解に最適な深さには幅があると言えそうです。
また1については、投入の翌日にキエーロの様子を確認したところ、黒土の表面にコバエが集まっていました…。猫缶の匂いも残ってしまっていたため、深さ10センチではキエーロを快適に使えないということが分かりました。
考察:20センチ位がちょうどよい穴の深さ!
可食部・不可食部の比較実験
仮説:野菜や果物の不可食部は、細かくすることで分解がしやすくなるのではないか?
黒土の中のバクテリアは、「人間が食べないもの」の分解が苦手な傾向にあります。例えば、野菜や果物の皮、芯、種といった繊維質で固い部分がそれにあたります。これまでの実験では、生ごみは細かくすると分解が早く進むことが分かっています。そこで今回は、フードプロセッサーで刻んだ野菜や果物を可食部と不可食部に分けてキエーロに入れ、分解速度の違いを検証します。使用した生ごみは、ゆず、大根、人参、じゃがいも、ほうれん草で、200gずつに分けてキエーロに投入します。
※不可食部をそのまま入れた場合の比較も同時に行いたかったのですが、料理で出た生ごみの量が足りませんでした・・・。
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1種、皮、切れ端など不可食部(200g)+水 |
2可食部(200g)+水 |
1日後 |
29℃ |
29℃ |
2日後 |
27℃ |
28℃ |
3日後 |
26℃ |
28℃ |
4日後 |
22℃ |
22℃ |
7日後 |
20℃ |
19℃ |
結果:分解速度の差がほとんどみられませんでした!
投入から7日後にはどちらも生ごみが残っていましたが、9日後には全て無くなっていました。1はゆずの皮や種、じゃがいもの皮などバクテリアが苦手なものが多かったのですが、キエーロの中に残ってしまうということはありませんでした。実験期間中の最高気温が20度以下とバクテリアにとって活動がしにくい環境ではありますが、そのような中でも生ごみを細かくすることのメリットは確実にあることが分かりました。
考察:キエーロに残りやすい部分は細かくして入れるとよい!
お餅の比較実験
仮説:お餅は食べられる状態にしてキエーロに入れると、分解されるのではないか?
賞味期限が切れていたり、カビが生えている鏡餅や切り餅を捨ててしまった経験はありませんか? 今回は、お正月を過ぎると食べる機会が減り、処分に困りやすいお餅を使って実験を行います。
冬季は一日中気温が上がらないことから、硬くて頑丈な切り餅や鏡餅をそのまま投入しても、長い間キエーロに残ってしまうことが予想されます。しかし、食べられる状態の柔らかいお餅であれば、バクテリアも分解しやすいのではないかと考えました。今回は、1湯せん
で柔らかくした上で、1口サイズに切り分けた鏡餅、2そのままの鏡餅(どちらも160g)をキエーロに投入し、分解の様子に違いがみられるか観察します。
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1湯せんして切り分けた鏡餅(160g)+水 |
2そのままの鏡餅(160g)+水 |
1日後 |
21℃ |
17℃ |
2日後 |
20℃ |
17℃ |
3日後 |
21℃ |
18℃ |
4日後 |
18℃ |
17℃ |
7日後 |
17℃ |
17℃ |
結果:2は投入時の状態とほぼ変わらず!
9日後に掘り起こしたところ、2は表面にひび割れが生じた他は、投入時とほぼ変わらない状態でした。また、温度上昇が全くありませんでした。対して、1は完全に分解されず温度の上昇も控えめでしたが、投入時と比較するとお餅の容積が減っていることが分かりました。このことから、切り餅や鏡餅のような非常に硬い生ごみをキエーロに投入する際は、柔らかい状態にほぐす必要があることが分かりました。
考察:お餅は湯せんや火を通してから入れる!そのままはNG!
固い塊になってしまった生ごみの解決方法
仮説:完全に分解されず固い塊になってしまった生ごみは、お湯で溶かすことができるのではないか?
キエーロを使っていると、生ごみが完全に分解されず塊になってしまうことがあります。キエーロに入れたままシャベルで簡単にほぐすことができるものもありますが、中には石のように固くなってしまったものもあります。1枚目の写真の通り、実験用で使用していたキエーロの中にもかなりの量の固い塊が溜まっていました。これらの塊をシャベルで砕いてみましたが、土の状態に戻すことはできませんでした…(写真2枚目)。この解決策として、生ごみの塊に水分を含ませて柔らかくすることで、簡単に砕くことができるのではないかと考えました。今回は、より効果がありそうなお湯(90℃)を使用して実験を行います。
結果:全ての塊を溶かすことができた!
1.5Lのお湯と混ぜた上でシャベルで砕いたところ、全ての塊を溶かすことができました(強い臭いが発生したことから、土ではなく生ごみが固まっていたことが分かりました)。ヘドロ状になった生ごみをキエーロの中に入れ、乾いた土としっかりと混ぜ合わせて様子を見ます。生ごみが再度固まってしまうのではないかという不安がありましたが、3日後に掘り返したところ、塊が出てくることはありませんでした。固まった生ごみがいつまでも残ってしまい困っていた方は、是非試してみてください!
考察:固い塊になった生ごみは、お湯で溶かして解決!
【リベンジ】卵の殻の分解実験
卵の殻が分解される様子を観察するためには、土と混ざらないようにする工夫が必要なことが分かりました。そこで、今回はリベンジとして、水切りネットに入れて実験を行います!卵の殻の状態・量は前回と統一し、3にはフードプロセッサーで細かくした野菜の切れ端を入れています。 1、2は掘り起こす→水を加える→埋めるを繰り返し、3は掘り起こす毎に生ごみを投入し続けます。今回は実験結果を明確にするために、卵の殻が分解される様子を数か月にわたって記録していきたいと思います!
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1卵の殻(そのまま)+水 |
2卵の殻(粉末状)+水 |
3卵の殻(粉末状)+水+生ごみ |
2週間後 |
27g |
26g |
26g |
1か月後 |
25g |
24g |
24g |
2か月後 |
23g |
22g |
22g |
3か月後 |
23g |
21g |
21g |
4か月後 |
22g |
20g |
20g |
5か月後 |
22g |
20g |
20g |
6か月後 |
22g |
20g |
20g |
結果:4か月で分解が止まってしまった!
4か月後からの2か月間は卵の殻の量が減らなかったため、卵の殻をキエーロで分解するには限界があることが分かりました。残ってしまった卵の殻は、市内に不法投棄されていたお酢で溶かした上で、キエーロに入れて処分しました。お酢に含まれる酢酸は、卵の殻や貝類の殻などの主成分である炭酸カルシウムを分解してしまいます。余っているお酢がある場合は、試してみてください!
考察:キエーロの力だけでは、どうしても分解できない生ごみもある!
編集後記
今年度から初めて販売を開始した直置き型のキエーロは、完売後も購入を望まれる声が複数寄せられたことから、人気の高さがうかがえました。販売の開始にあたっては、既にキエーロを使用している方からの悩みや要望を参考として、様々なニーズに応えていきたいという思いがありました。来年度以降も、実験やアンケートの実施に留まらず、様々な形でキエーロの周知・販売を行っていきたいと思います。市は市民の皆様と一体となって、ゼロカーボンシティの実現に向けて一歩ずつ歩んでいきます!